a.組織の名称 |
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法制化による組織の名称は、「原子力コミッション」“Commission on Atomic Energy”とすることで委員会が一致した。
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b.補償 |
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コミッションの委員に関しては、サラリーを受け取らない方がいい、と感じられる。そうすることによって政治的圧力を受けやすい立場を回避できる、と感じられる。事務局長(administrator)や事務局次長(deputy administrator)はサラリーを受け取るべきであることで合意した。それぞれ年俸1万5000ドルと1万2000ドルのオーダーであろう。
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c.構成 |
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委員は、特別な政府機関の代表や利益代表であるべきではないという点では一致したが、委員9名のうち、2名が陸軍から、2名が海軍からという草稿の中の条項については、いくつかの異なる見解が存在した。ブッシュ博士は、委員は全員シビリアンであるべきだという見解に好意的であり、これはコナント博士も同様である。一方ロイヤル将軍は、この分野においては陸軍の見解が優勢であり、もしコミッションの構成において、この事実が反映されるなら、議会での行動が大幅に促進されるだろう、と指摘した。彼は、軍部の強力な代表性が望ましいと感じている。ハリソン氏は、軍部の利益は、恐らくは、今現在の「軍事理事会」の条項によって守られるであろうし、これに加えて、戦時や脅威の存在する非常時において、強化された大統領の効力を、軍部に移管するような条項を加えてはどうかと提案した。グローヴズ将軍は、委員の何人かは、軍人の経験が必要だとの条項が望ましいと言う見解を表明した。しかしその場合、委員は必ずしも現役の軍人である必要はない、としてはどうかという見解であった。
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d.大学における研究に関する管理 |
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コナント博士(*ハーバード大学学長でもある)は、研究に関して広範な権限(*sweeping powers)がコミッションに与えられる件に関して関心を表明した。彼は、資材(*この場合は核分裂物質などのこと)を制御・管理することの必要性は認識するが、ある一定の量は大学研究機関自身が装備すべきであり、国家安全に危険を及ぼすことなしに、この分野における実験を実施できることが必要だ、そして同時に基礎研究を追求していく際のかなりの範囲の自由性が必要だ、と感じていている。
コンプトン博士はエネルギー放出に関わる手段が必要かもしれないと述べた。委員会は、法案にコミッションにとって量的な一定の境界線が必要だということに肯定的で明確に銘記することに賛同した。
委員会は、国家の安全を脅かさない範囲での、研究の自由の方向性を強調することに同意した。
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f.基礎研究 |
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ブッシュ博士は、法案は、コミッションは通常はこの分野における基礎研究を大学群が推進できるような肯定的文言を含んでおくべきだと強く主張した。もしそうでなければ、この法案は彼の(*ブッシュの)「基金法案」(his Foundation bill)と直接に摩擦を起こし、この分野での基礎知見を健全に促進することを深刻に抑制するかもしれない、と述べた。委員会は、この見解に全体として賛同した。
(* |
ブッシュはこの時、科学研究開発局の局長として、膨大な軍事的科学研究開発予算を、議会や政府他部局からほぼ独立して使える立場にいた。もちろん研究課題も軍部からの意向を受けて、自由に選択できる立場にいた。つまり何らの掣肘を受けない立場にいた。これが彼が軍産学複合体制の要に存在し得た理由である。戦後もその体制を継続できるかどうかが、この暫定委員会が開かれた7月に提出された、マグニューソン法案とキルゴア法案の行方であった。マグニューソン法案はほぼ、ブッシュの主張通りの内容だったのに対して、キルゴア法案は真っ向から対立する法案だった。結局マグニューソンとキルゴアは妥協し、折衷的な法案を提出するが下院で否決された。この折衷法案に対して、あくまでブッシュの意向を100%実現する法案が、ここで言っている基金法案である。結局、ブッシュが勝利して、この法案「国家科学基金」法が成立し、戦後も戦時中同様、ブッシュの思いとおりの体制が構築できるかのように見えたのだが、結局ブッシュの思いとおりにはならなかった。しかしこれは後の話である。
ここでは、暫定委員会のメンバーが、原子爆弾などの核兵器開発を含む科学的軍事的研究開発に対して、戦時中と同様に、議会や政府関連他部局からも独立して、連邦予算を自由に使おうとしていた事だけを確認しておけば十分だろう。
関連資料「バニーバー・ブッシュについて」を参照のこと。
その意味では、「日本への原爆の使用」(=広島への原爆投下)→「ソ連との冷戦創造」(=準戦時体制の維持発展)→「核兵器を含む連邦軍事予算増額とその掣肘なき浪費」という流れが見えてくるのであり、日本への原爆使用(=広島への原爆投下)は、戦時中・戦後にかけてのアメリカの「軍産学複合体制の形成」という視点から見てみないと、本当には解明できないのかもしれない。こうしたアングロ・サクソン・ブロックの側から見ると、トルーマンなどは、幕間に登場した一人のピエロなのかもしれない。) |
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g.検閲 (Censorship) |
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ブッシュ博士は、この法案の検閲及び国家安全に関する条項は、幅広広すぎる、と指摘した。彼は、国家安全に危険でない範囲において、この分野(*核兵器をを含む原子力エネルギー分野)における出版あるいは情報開示は認められるべきだと提案した。この原則をそれとなくほのめかしたルールをコミッション(*戦後構想されている原子力エネルギーコミッションのこと)が適用すべきだ、と指摘した。委員会は全体として、もしこの分野における出版が狭く規制されてしまうと、アメリカが持つべき利点が損なわれてしまうかもしれないと、と言う点で賛同した。
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h.特許権 (Patents) |
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特許に関する条文は、秘密の命令を課すことできるという点で、コミッションを強化することになり、かつコミッションが国家的利益のために必要だと決定するかまたはそう仮定した場合、問題を避けることができると言う点で、全体として賛同した。
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i.共同開発トラストの資産 Assets of the Combined Development Trust) |
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いかなる国際的合意においても、アメリカの利益を引き継ぐコミッションを強化するようの条項に銘記されるべきだと言う点で合意した。
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j.国際関係 |
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マーベリー氏は、国際的合意に入る事についてその権限を法案の中に銘記する必要はない、と指摘した。というのは、この分野におけるいかなる国際条約を締結する力は、自動的にこの法案に由来するだろうからである。
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k.総会計局 |
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この法案は、コミッションは、TVAにおけるのと同様な、総会計局と関連を持つべきだと、同意した。こうした会計総局にコミッションは、会計検査を受けるのだが、もし国家利益上必要な一定の経費の場合、細目は検査されないことを確認できる力を持つからである。
(* |
これは秘密予算を持つことができる事を意味する。国家利益、ねぇ。) |
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l.未分類事項 |
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委員会メンバーから出されたその他の提言は以下である。
(1) |
グローヴズ将軍
この法案に銘記されている4つの理事会に加えて、コミッションが、随時その必要が起こった場合に備えて、「その他の理事会」という文言を入れておくべきである。 |
(2) |
グローヴズ将軍 統括管理者はコミッションによって敷かれるルールのもとで運営を行うべきであり、彼の個人的決断が一つ一つコミッションからの保証を必要とされるべきではない。
(* |
こで議論されているコミッションは戦後、米原子力委員会という形で実現するのだが、グローヴズは、その事務局長に、マンハッタン計画時代の自分の右腕を送り込んでいる。) |
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(3) |
グローヴズ将軍
マンハッタン計画が保有する「在庫」はここに銘記してある3ヶ月で提出することは難しい。また報告年度は、暦年ではなく会計年度が望ましい。 |
(4) |
ブッシュ博士
管理・事務用人員は、シビリアン業務の下に置かれるが、科学者、技術者、法律関係者は例外とする。 |
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